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浜田省吾を聴いてみたい方に
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青春のヴィジョン
浜田省吾1979年発売のアルバム「君が人生の時…」収録曲です。
かなり壮大なタイトルなんですね、この曲。
「青春のヴィジョン」ですから。
ヴィジョンという言葉には「将来の見通し」という意味の他に、「幻想」とか「幻影」という意味があります。

何ひとつ守るべきものは無いと感じる
ひとりの凍えそうな夜には
見知らぬ町の夜景がひろがる
ホテルの開かぬ窓こわしたくなる
最初から押さえきれない苛立ちを全面に出しています。
浜田省吾のテーマのひとつと言ってもいい「青春の苛立ち」がここでもクローズアップされています。
「僕は苛立っているんだ」と言葉で説明するのではなく、「ホテルの窓をこわしたくなる」という気持ちを表現することで、主人公の持つ焦燥感を聴き手に伝えようとしています。
「何ひとつ守るべきものは無い」という気持ちや「ひとりの凍えそうな夜」「見知らぬ町の夜景」という表現にも、主人公の虚無感や孤独感を感じられて、つまり、この歌はかなり重たい設定で始まっているわけです。
「見知らぬ町のホテルに宿泊している」という状況設定は、ライブツアーで日本中を旅して回るライブ・ミュージシャンの生活を描いたものと思われます。

心の中に描いた僕の人生へのヴィジョン
片手でかばいながら 今日も
時には道化師 時には優しい男を演じる
まるでゲームのように
この歌で「ヴィジョン」という言葉が登場するのは、この場面だけです。
青春のヴィジョンではなく「人生へのヴィジョン」となっています。
道化師や優しい男を演じる主人公は、おそらくミュージシャンとして苦悩の時期に立つ男性の気持ちを代弁しているのかもしれません。
ただ、聴き手としてはこの歌を一般論としてとらえて、若い時代に陥りがちな苦悩として考えることも可能です。
僕の人生へのヴィジョンを片手でかばいながら生きているところに、主人公のささやかな誇りが見えます。
彼がかばっているものはおそらく彼自信のプライトであり、彼自身のアイデンティティなんですね。
たとえば、あるミュージシャンがいて、自分の歌いたい歌を歌うことができない、あるいは歌った歌がヒットしない、聴き手に伝わっていないとします。
周囲の人々は彼にいろいろなアドバイスをして、彼自身も様々な試行錯誤を繰り返します。
ラガーマンのスタイルで笑いながら写真を撮ったり、他人の書いた詞を歌ったりしたかもしれません。
歌いたくないものを歌うこともあったかもしれません。
もうそれは彼にとって「ゲーム」になってしまっているとしたら、きっと彼は苦悩しているのだと思います。
彼が思い描く「将来の見通し」というのは、もう「幻想」に過ぎないと、彼自身も理解し始めているかもしれません。

僕はどこへ行こうとしてたんだ
疲れ果てた でもまだ眠れない
もうこれ以上走れないよ
そう叫びながら走り続けてる
そして、最大のメッセージがサビの部分です。
もうこれ以上走れないと思いながらも走り続けている、これはまさしく当時の浜田省吾というミュージシャンの生き様ですよね。
あっち行ったりこっち行ったり、いろいろな試行錯誤に振り回されて、もうボロボロになって、「でもまだ眠れない」、眠れるわけがない、彼にとっては歌い続けることが人生だったわけですから。
「もうこれ以上走れないよ」と血反吐吐きながらそれでも叫んで、走り続ける主人公の姿には、一種の憐れみさえ感じさせます。
けれども、そこには同情だけでは終わらないエネルギーがあります。
4回戦ボクサーが殴られ続け、血だらけになりながらも、対戦相手に向かっていくあの姿ですね。
それは、もしかすると「敗者の美学」というべきものなのかもしれません。
けれども、負け続けた浜田省吾だからこそ得られた人生の真実みたいなものが、この歌には感じられます。
そして「敗者」としては終わらないという未来への希望、人生への執拗な執着が彼を走らせ続けたのかもしれませんね。

メロディはマイナー調の8ビート、浜省らしさが溢れています。
切なくて激しい、まさしく青春の苛立ちを音にしたようなメロディ。
浜田省吾はメジャーになっていったけれど、僕自身はまだあの頃の苛立ちの中から抜け出せていないような気がしています。

| 全曲レビュー(5-君が人生の時) | 19:31 | - | trackbacks(1) |
恋の西武新宿線
浜田省吾1979年発表のアルバム「君が人生の時…」収録曲です。
もっとも、この曲は、浜田省吾がソロデビューする前に在籍していたバンド・愛奴のファースト・アルバム「愛奴」に収録されたのが初出でした。
ちなみに、「愛奴」からはこの曲の他に「二人の夏」「夢にいざなえ」「初夏の頃」などが浜田省吾のアルバムに収録されています。

テーマは「すれ違った愛」。
浜田省吾のラブソングにとっては、最大のテーマといってもいいテーマですね。
心がすれ違い始めた二人の切ない別れを描いています。

白いホームにビルの影が 蒼く広がり ベルが鳴り響く
九月の夕暮れ 人波流れる
街灯りともる 西早稲田通り

うつむいて「さよなら これでもうお別れね」
ふりむいて独り言 「愛してる いつまでも」
明日からは またもとの寂しいギター弾き
煙草けむるキャバレー
君に聞かせてあげよう 悲しい気持ちを
作り笑いの陰のため息
タイトルに鉄道の路線名が入っていたり、歌詞の中に「西早稲田通り」なんていう通りの名前が入っていたりするのは、実に1970年代らしい特徴です。
1970年代には、吉田拓郎「高円寺」や甲斐バンド「新宿」などという名曲がありました。
また、「♪中央線よ 空を飛んであの子の胸に突き刺され」というフレーズで有名な友部正人の「一本道」も1970年代を代表するフォークソングのひとつです(ザ・ブームの「中央線」が友部正人の「一本道」にインスパイアされているというのは有名な話)。
実に、1970年代というのは、若者達の文化が"都市"と密接な関係を保っていた時代でした。
まさに"都市"は生き物であり、若者達はその"都市"の中で新しい文化を形成していったのです。
現代のように通信事業が発達した社会では、"都市"の持つ重要性が薄れ、かつて若者達をとらえた鉄道や街という存在は大きな存在ではなくなってしまっています。
浜田省吾の最近の曲でも、「いろんな国を旅してきた」とか「彼女のいない国へと飛んでいくのさ」など、歌詞の世界が非常にグローバルになっていることも時代の現れなのかもしれません。

「君の髪 もう少し長ければ恋したよ」
「あなたの唄 もう少し聴けたなら恋したわ」
お願いだから 次の電車に遅らせて 夜の街を歩こう
数ある浜田省吾の作品の中でも「名フレーズ」と呼ばれる有名な歌詞はいくつもありますが、このフレーズも歴史に残る浜田省吾の「名フレーズ」ですね。
お互いの心がすれ違っている原因があたかも髪の長さや歌にあるようなフレーズは、まさしく若さの証明といえるのかもしれません。

初期の浜田省吾の作品には、こうしたピュアなラブソングが多いのですが、こうしたピュアな作品にこそ、本当の意味での浜田省吾が登場しているような気がします。
それは、浜田省吾がフィクションな作品よりも、ある意味ノンフィクションに近い作品を得意としてきた作家だということと関係があるかもしれません。
私小説的な部分をちらつかせることで、オーディエンスの共感を得て、そこから彼自身も成長してきたのではないかという気がします。

サウンド的にも完成度の高いフォーク・ロック・スタイル。
当時は、シティ・ポップスと呼んだものかもしれませんが、「愛奴」時代の曲だという違和感は全然ないくらいにアルバムに溶け込んでいます。

現在のライブでも演奏してほしい曲のひとつですね。
| 全曲レビュー(5-君が人生の時) | 21:20 | - | trackbacks(0) |
ミス・ロンリー・ハート
浜田省吾1979年発表のアルバム「君が人生の時…」収録曲です。
等身大の浜田省吾が登場してくる爽やかな青春ポップス。
テーマは「ミュージシャンの恋」。
ライブが終わった後に出逢った素敵な女の子のことを歌った歌です。

ステージ降りてきた時に 君は楽屋のドアにもたれて
冷えたビール 僕に渡して「よかったわ」と微笑んだ
ステージ後の寂しさ 吹き飛ばそうと街へ出かけた
陽気なバンド仲間達と 車に乗り込んで
どこから来たの? ミス・ロンリー・ハート
こんな夜は傍にいてほしい
優しい男達が君の耳もとで囁く
恋のかけひき 苦手な僕は ただ遠くで見てただけ
楽しかったライブが終わった後の打ち上げで、主人公は気になる女の子に出逢いますが、恋のかけひきが苦手な彼は、他のバンド仲間達に遅れを取ってしまいます。
こういうミュージシャンのラブソングとしては特殊と思えるくらいの弱気なラブソングですが、そこがやっぱり浜省らしいということなんでしょうね。

どこから来たの? ミス・ロンリー・ハート
こんな夜は傍にいてほしい
でも いつの間にか君 他の誰かの腕の中で踊り続ける
そして いつしかどこかへ消えていった
結局、彼女はいつの間にか別のバンドメンバーの誰かと、どこかへ消えてしまいます。
ほのかな恋心を抱いていた主人公の切なさが余韻として残る、まさしく青春のポップスですね。
サウンド的にも爽やかなウエスト・コーストのフォーク・ロック・スタイルで、歌詞とメロディがぴったりと合ってます。

子供の頃から、こういう青春サウンドが好きで、ギターで良く弾いてました(笑)
今でも時々思い出したように歌ってしまう曲ですね。

浜田省吾のこういう初々しさが本当に大好きでした☆
| 全曲レビュー(5-君が人生の時) | 21:33 | - | trackbacks(0) |
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