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MY OLD 50'S GUITAR
浜田省吾1990年のアルバム「誰がために鐘は鳴る」収録曲です。
1980年代を走り続けてきた浜田省吾の1990年代の苦悩が、まさしくこの曲から始まります。
そういう意味では、記念碑的な曲と言えなくもないです。

曲のタイトルは「俺の古い50年代のギター」。
テーマは一言で言って、浜田省吾、原点に帰る、です。
歌詞のストーリーは、40代になった男が人生の壁にぶつかって必死に自分を取り戻そうとしている、そんな感じです。

この曲のタイトル、いいですね。
「50'S GUITAR」はもちろん特別の思いが込められたタイトルです。
浜田省吾個人的には、おそらく少年の頃に憧れたギターという意味かもしれません。
けれども、その少年・浜田省吾が憧れただろう50年代のギターには、ロックンロールの歴史上、とても重要な意味が含まれているのです。

ご存知のとおり、この世にロックンロールが誕生したのは1955年のこと。
その後、ロックンロールは瞬く間に大人気を獲得、俗に言う「フィフティーズ」の象徴ともいうべき文化を形成しました。
そして、ロックンロールの流行とともに新たな脚光を浴びたのが、50年代のロックンローラーたちが持っていたエレキギターでした。
それまで、カントリー&ウエスタンなどでもアコースティック・ギターが主流だったのが、ロックンロールの隆盛と歩調を合わせるかのようにエレクトリック・ギターが市場を拡大していきます。
チャック・ベリーのギブソンES-350T、エルヴィス・プレスリーのバックギターとして知られるスコッティ・ムーアのギブソンES-5、エディ・コクランのグレッジ6120(有名なレコードジャケットの中でエディが抱えているあのギター)など、50年代はまさしくロックンローラーとエレキギターとの時代だったのです。



こうして考えると、浜田省吾が「俺の50年代のギター」というタイトルで、古いギターへの愛情を歌ったのは偶然ではなく、それは紛れもなく自分の原点であるロックンロールへの回帰を歌ったものといえるのです。

40回目の誕生日に
自分の頭を撃ち抜く奴は
あまりに一途な理想と望みを描き続けた
そんな男さ
銃による自殺は、ヘミングウェイのパロディですが、40歳の誕生日を迎えようとしていた浜田省吾の現実感が表現されています。
大成功を夢見てきた男が40代になるところで満たされぬ思いに絶えきれずに自殺してしまうというフレーズは、当時の浜田省吾の立場を連想させる歌詞です。
30代を走り続けて、多くの成功を勝ち取った浜田省吾は、40代という人生の節目で新たな壁にぶつかります。

この曲の中には、そんな男の行き詰まりを予感させるフレーズが随所に出てきます。

おれを強く抱き締め つなぎ止めてくれ
何ひとつリアルに感じられない
My old guitar 荒んだ心 静めてくれ
Emptiness まるでマイナーブルース 続くよ永遠に
曲の中で、浜田省吾は何度もギターに話しかけます。
それは、神を信仰する人たちがあたかも神に祈り続けているかのように、浜田省吾はギターに祈り続けています。
前作「FATHER'S SON」に収録された「DARKNESS IN THE HEART」の中で、歌うことの虚しさを告白した彼は、ここに来て自分の原点である古いギター=ロックンロールにひたすら祈り続けているのです。

愛がすべての扉
開けてくれると信じていた少年の日々
穏やかな幸せ あまりに脆くて
強い男を演じてきた
おれは臆病風に吹かれてるだけなのか
それとも見なくてもいい闇を見たのか
浜田省吾は、「誰であれ自分で自分を救済しなければならない」と語っています。
そして、この曲、このアルバムこそが浜田省吾自身の救済として構成されているというのは、実に興味深い話です。

「おれを強く抱き締め つなぎ止めてくれ」
「荒んだ心 静めてくれ」
「歪んだ苦痛 麻痺させてくれ」

何度も何度も懇願するかのように、浜田省吾は歌の中で祈り続けていました。
そして、最後に彼を救うことになるのは、彼の原点であるロックンロールだったのです。

My old 50's guitar
何を弾こうと何処へ行こうと自由なんだぜ
でも Old guitar 魅せられたように3コードが
Restless heart まるでマイナーブルース
続くよ 永遠に
「スリーコード」とは音楽を構成する中で、特に重要な3つのコードのことで、ブルースやロックンロール、フォークなどの音楽は基本的にこの「スリーコード」で構成されています。(例えば、A7-D7-E7という3つのコードだけで曲が構成されているなど、トラディショナルな音楽は非常にシンプルな構成になっている場合が多い)
「何を弾こうと何処へ行こうと自由なんだぜ」と問いかけながら、「魅せられたように3コードが続くよ」と歌い、ロックンロールへの心の呪縛の強さを表現しています。

音楽をやることにおいては、僕は報われたと思うんですよ。とてつもない成功ではなかったけどもね。自分が音楽をやって、ファンに恵まれて、リスナーを持てて、だから、そういう意味では、報われたと思うんだけど、何一つ満たされなかったんですよね。結局、"MONEY" で唄った、いつか!って言いながら、"遠くへ" で唄った、遠くへ遠くへってずっと思って遠くへ来たら、結局そこもここも一緒だったという意味では、結局何も満たされなかったんだと思うんですよね。
(ブリッジ95年10月号)
そして、浜田省吾の「心の中の暗闇」は、この後「青空の扉」に至るまで引きずられて行くことになるのです。

あの夏の日 草原の輝きの中
見上げた空の透き通った蒼さに目をやられたまま
心の中に深い暗闇を抱え込みながら、けれども浜田省吾は走り続けていきます。
僕たちがどれだけ彼の「心の暗闇」を理解しながら、彼を追いかけていたのか、時々僕は考えてみたくなります。
もしかすると、僕はいつまでも80年代の浜田省吾の残像を彼に求め続けて、90年代の浜田省吾と対峙していたのかもしれません。
| 全曲レビュー(17-誰がために鐘は鳴る) | 22:04 | - | trackbacks(0) |
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