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浜田省吾を聴いてみたい方に
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浜田省吾のアルバムの流れ
浜田省吾のアルバムレビューを書きながら、ひとつひとつの作品についてだけではなく、全体的な流れについて押さえておくことも必要かなと感じました。
ということで、簡単に浜田省吾のアルバムの流れについて整理してみたいと思います。
まあ、浜田省吾入門者のための簡単紹介です。

浜田省吾のアルバムには、オリジナル盤と呼ばれるものと企画盤と呼ばれるものの2種類のアルバムの流れがあります。
オリジナル・アルバムはいわゆる普通のアルバムのことで、スタジオ録音の新曲を発表するもののことで、企画盤とはそれに対してライブ・アルバムやベスト盤、リテイク盤などのことをいいます。
なので、浜田省吾の流れを考えるうえでは、オリジナル。アルバムの流れというのが重要になってきます。

本人も意識してそう作っているからなのだと思いますが、浜田省吾のオリジナル・アルバムはほぼ3枚ごとに大きなテーマを形成して発表されてきています。
いわゆる「3部作」という考え方です。

00 愛奴(1975年)
01 生まれたところを遠く離れて(1976年)
02 ラブ・トレイン(1977年)
03 イルミネーション(1978年)
04 マインド・スクリーン(1979年)
05 君が人生の時(1979年)
06 HOME BOUND(1980年)
07 愛の世代の前に(1981年)
08 PROMISED LAND(1982年)
09 DOWN BY THE MAINSTREET(1984年)
10 J.Boy(1986年)
11 FATHER'S SON(1988年)
12 誰がために鐘は鳴る(1990年)
13 その永遠の一秒に(1993年)
14 青空の扉(1996年)
15 SAVE OUR SHIP(2001年)
16 MY First Love(2005年)
まず、気が付くのはアルバム発表の間隔。
当初は毎年1枚ずつ発表していたものが、途中から2年に1回となり、現在ではさらにその間隔が大きくなっています。
当初はコンサートを開催するために新曲が必要で、どんなに苦しくてもアルバムは製作しなければならなかったという時代でした。
ある程度、安定し始めた時期から、浜省はオリジナル・アルバムと企画盤を毎年交互に出していくのがちょうど良いみたいな感覚になっていきます。
オリジナル・アルバムを製作するには大変な労力と時間を要するので、そういうアルバムを発表した後は、バラード・コレクションや「SURF&SNOW BOUND」のような企画盤をやるのが良い、ということでした。
その後は、さらに前作を超える作品を作るためには大変な時間が必要になるということで、間隔が空くようになったと思われます。

さて、この浜田省吾のアルバムを3部作という考え方で区切りながら見てみましょう。

00 愛奴(1975年)
01 生まれたところを遠く離れて(1976年)
02 ラブ・トレイン(1977年)
バンド・デビューの「愛奴」を含むこの3枚は、浜田省吾にとってプロ・ミュージシャンを目指すための「習作のような存在」と本人は語っています。
まだ、プロを目指している段階の作品ということで、その代わりにテーマも言葉も非常にピュアな浜田省吾を聴くことができます。
ひとつの原点がこの時期にあるといっていいでしょう。

03 イルミネーション(1978年)
04 マインド・スクリーン(1979年)
05 君が人生の時(1979年)
次の3部作は、いわゆる「迷いと混乱の中沈んでいた'70年代」と歌われた苦悩の時代の作品群です。
この時期、自分の音楽の方向性を見つけだすことができず、レコード会社や業界の評価、本人の音楽観など、すべてのものが見事にすれ違って、作品を作り出すのにとても悩んでいたといわれています。
ただし、そういう時期の作品なので、浜田省吾の苦悩の原石がまるでダイヤモンドのように散らばっていることも確か。
えー、こんな作品歌ってたの?というような歌も、この時期に多いみたいです。

06 HOME BOUND(1980年)
07 愛の世代の前に(1981年)
08 PROMISED LAND(1982年)
次の3部作は、明確にロックンロールという自分の定義を見つけて、1本筋の通った音楽を始めた時期のもの。
本人は、ここが本当のスタートというように、現在の浜田省吾はここから始まっているといっていいでしょう。
アルバムごとに明確なテーマを持ち始めたのもこの時期で、特に社会的なメッセージを強く意識した歌詞が注目されるようになります。
テーマはアルバムごとに大きくなり、「PROMISED LAND」では核戦争の後の地球をイメージさせる壮大なところにまで発展します。

09 DOWN BY THE MAINSTREET(1984年)
10 J.Boy(1986年)
11 FATHER'S SON(1988年)
あまりに大きくなりすぎたテーマに本人も不安を持ち、等身大の自分自身を通して社会的なメッセージ・ソングを作る手法へと変わったのがこの時期でした。
一人の少年が3枚のアルバムの中で少しずつ成長していくという共通テーマがあります。
浜田省吾が安定した売り上げを獲得するのもこの時期のことです。

12 誰がために鐘は鳴る(1990年)
13 その永遠の一秒に(1993年)
14 青空の扉(1996年)
個人よりも日本という国家をテーマにした前3部作に対して、この時期はかなり徹底して個人としての人間を掘り下げるようになります。
トップ・ミュージシャンとなることにより、新たに発生したリスクが作品の中に反映されるようになってきたのかもしれません。
音楽的な完成度としてはかなり洗練され、「泥臭い」といわれてきた浜田省吾の音楽に対する評価を変えつつある時期でした。

15 SAVE OUR SHIP(2001年)
16 MY First Love(2005年)
そして、現在です。
アルバム発表の空白期間が長すぎて、もう3部作という考え方では整理できないような気もします。
それまで、メッセージソングとしてノンフィクションな作品を提供し続けてきた浜田省吾の中に、フィクションライターとしての欲求が生まれていると感じられるようになっています。
もう自分のことを歌うだけでは作品は作れなくなっている、そういう時期に入っているのかもしれませんね。

さて、ざっと駆け足で浜田省吾のアルバムの流れを追いかけてみました。
これから浜田省吾を聴いてみようかなという人は、これを参考にして3部作という単位でアルバムを考えてみると良いのではないでしょうか。
それぞれの時期に、それぞれの浜田省吾の音楽の特徴が現れていて、なかなか楽しいと思います☆
| 全アルバムレビュー(はじめに) | 16:33 | - | trackbacks(0) |
BASEBALL KID'S ROCK
浜田省吾1990年発表「誰がために鐘は鳴る」収録の「BASEBALL KID'S ROCK」です。
別に阪神タイガース優勝記念というわけでもないのですが(笑)
すごいですね〜、大阪の盛り上がり☆

ということで、広島出身の浜田省吾はもちろん広島東洋カープのファンなのですが、本日は野球大好き少年だった浜田省吾さんの歌う「BASEBALL KID'S ROCK」レビューです。

日本のロックシーンの中で、ここまで野球をテーマにした歌はかなり珍しいのではないでしょうか。
もちろん、浜省もそのことをきちんと理解したうえで、この作品を書き上げたように思われます。

同期の奴等はもう今では 少し寂しげな顔をして
穏やかに家族と暮らしている
昨夜 彼女がふっと呟いた
「独りの夜は寂しいわ」と 真夜中の長距離電話
高く舞い上がるボールも必ず落ちてくる
いつユニフォームを脱いでも悔いなどないけど
歌のストーリーは、既にピーク期を過ぎたベテラン選手が自分の選手生命と見つめ合っているという、かなりシリアスな内容です。
どんなに素晴らしい選手にも、いつか落日はやってくるはずで、浜田省吾はそこに人間としてのターニングポイントを見つけて「いつまでたってもただのベースボール・キッズ(野球小僧)なんだ」と、原点回帰への気持ちを歌っています。

つまり、この歌は単純に「野球が好きだ」というだけではなく、どのような立場の人たちにも必ずターニング・ポイントはやってくるはずであり、そういう時にこそ原点に立ち返ろうというメッセージを含めていたわけです。

また、本人は当時のインタビューの中で、この歌は「救済」の歌であり、ある人にとっては音楽であり、ある人にとっては「野球」である。
舞台は人によっていろいろと違うかもしれないが、自分自身を救ってくれる何かがあるということ、それが大切なんだと語っています。
たまたまこの歌は「野球」だったわけですが、自分自身を救済してくれるものに対する叫びのようなものが、この歌からは感じられます。

もちろん、浜田省吾が自分の野球チームを持っていたくらいに野球の好きな人間であったからこそのこの歌ということは確かなのですが。
ちなみに、浜省の高校の大先輩にはかの広岡達朗元監督がいます(呉三津田高校)。
初代ミスタータイガースの藤村富美男さんは同じく呉出身ですが、呉港高校出身でした。

シリアスなテーマの歌を明るいポピュラーミュージックで伝えていくのは、音楽の持つ不思議な魅力のひとつ。
人生のターニング・ポイントで自分自身を見つめ直しながら、そうかー、オレはただ野球が好きだったんだよなー。誰かのために野球やってたわけじゃないんだ。ただ、子供の頃から野球が好きで、ただそれだけでずっと野球を続けてきたんだったよなー。
そんなふうに考えながら、このロックンロールを聴くことができたら。
人生ってそんなふうにして豊かになるかもしれませんよね。

中日ドラゴンズの川相昌弘選手、読売ジャイアンツ時代からこの曲をテーマソングにしてましたよね〜。
バッターボックスに入ることないから、ほとんど聴いたことないんですけれど(笑)

そういえば、かつてのツアーの時、この歌を歌う時に浜省が野球選手に扮してバットを振り回し、わー、ホームラーン!とかやってませんでしたっけ?
会場がわーわー騒いで、浜省が客席最前列の人たちとハイタッチして走るという、なんだか微笑ましい演出だったような気がします。
| 全曲レビュー(17-誰がために鐘は鳴る) | 22:46 | - | trackbacks(3) |
誰がために鐘は鳴る


浜田省吾1990年発表のアルバム「誰がために鐘は鳴る」です。
この後、「その永遠の一秒に(1993年)」「青空の扉(1996年)」と続く3部作の最初の作品となりました。
浜田省吾のアルバムを体系的に理解するには、3部作という考え方が便利なのですが、「DOWN BY THE MAINSTREET(1984年)」「J.Boy(1986年)」「FATHER'S SON(1990年)」と続いた3部作で、一人の男性の成長を追いかけながら、日本という国のアイデンティティに踏み込んだ彼は、次のテーマとして「人間とはなんぞや?」という哲学的な分野のテーマを選ぶことになります。

「誰がために鐘は鳴る」というタイトルは16世紀イギリスの詩人ジョン・ダンの詩の一節に由来します。
「誰がために鐘は鳴るやと、そは汝がために鳴るなれば」という名文句は、20世紀のアメリカでヘミングウェイの同名小説の題名としても引用されました。
鐘は誰かのために鳴っているんじゃない、お前のために鳴っているんだというこの言葉は、浜田省吾のスタイルが個としての自分自身に戻ってきていることを暗示しています。

01 MY OLD 50'S GUITAR
02 BASEBALL KID'S ROCK
03 少年の心
04 青の時間
05 サイドシートの影
06 恋は賭け事
07 夜は優し
08 SAME OLD ROCK'N' ROLL
09 太陽の下へ
10 詩人の鐘
11 夏の終り

さて、テーマもさることながら、ひとつひとつの曲の完成度の高さにも、当時の浜田省吾のプライドがうかがえるかのようなラインアップです。

このアルバムから、シングルとして発表された曲はありませんでした。
ただし、1999年になって「詩人の鐘」のリメイクバージョンがシングルとして発売されています。

それまでの浜田省吾のイメージでもあった疾走するかのごとく弾けるような曲はありません。
全体にゆったりと確かな落ち着きを持った楽曲が並んでいます。
「MY OLD 50'S GUITAR」はマイナーコードのブルース・ソングで、これまでの浜省作品とはニュアンスの異なった作品に仕上がっています。
あれ、なんか大人っぽくなっちゃったなーという印象。
でも、前作までの作品に比べて、サウンド的には原点に帰ったというか、オーソドックスなロック・サウンドになっていたのは嬉しかったですね。

浜省らしいロックンロールとしては「詩人の鐘」。
浜省らしいポップ・ミュージックとしては「BASEBALL KID'S ROCK」「恋は賭け事」「SAME OLD ROCK'N' ROLL」。
浜省らしいバラードソングとしては「少年の心」「青の時間」「サイドシートの影」。
浜省らしいウエスト・コースト・サウンドとして「太陽の下へ」と「夏の終り」。

アルバムの中では「夏の終り」の秀逸さが目立ちます。
1曲目の「MY OLD 50'S GUITAR」で生きることのツラさを感じながら前へ進もうとしている主人公を歌い、アルバム最後の「夏の終り」ではすべてを投げ捨ててもう終わろうと感じている主人公を歌う。
けれども、きっと主人公は再びギターを手にして、もう一度やってみようと考えることでしょう。
このアルバムはそのようにして一人の男が生きていく中で彷徨うメビウスの輪をイメージさせます。
浜田省吾本人が言っているように、アルバム全体に漂っているのは「救済」。
鐘は誰かのために鳴っているんじゃない、お前のために鳴っているんだという言葉を、浜省はまさしく自分自身のことのように感じていたのかもしれません。
秋の夜にじっくり聴きたい大人のアルバムです。
オススメ♪

| 全アルバムレビュー(オリジナル) | 19:48 | - | trackbacks(0) |
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