浜田省吾1977年発表のアルバム「ラブ・トレイン」収録曲です。
初期浜田省吾のバラードの名曲として、強い人気を持つ曲ですね。
初めてのバラード・コレクション「サンド・キャッスル」にも収録され、それぞれ素晴らしいアレンジが与えられています。
個人的な思い入れという点では、やはり「ラブ・トレイン」のオリジナル・バージンが好きですが。
雨の日の昼下がり 僕らはめぐり会い
二度目のデートの夜 恋に落ちたよ
やがて二人 暮らし始め まるで映画で観たような
"おかえり"と"おやすみ"の口づけの日々
でも君 この頃 ふっと黙り込む
まるで夢から醒めたように
お願い 今は何も言わずに信じて
やさしく微笑む 君の眼差し
それだけ 見ていたい 僕さ
若き日の浜田省吾らしい純粋なラブシーンから曲は始まります。
歌のテーマは、これもまた浜田省吾定番の「壊れていく愛」なのですが、前半の甘い描写が、既に二人の未来を予感させるかのようです。
僕の仕事 ささやかな夢だけに支えられて
何ひとつ約束もできないままで
肩を寄せて 帰り道 暗い横顔見てると
どうしていいのか わからなくなる
ねえ しばらく別れて暮らそうか
それとも… ああ このままじゃ
お願い 今は何も言わずに信じて
やさしく微笑む 君の眼差し
それだけ 見ていたい 僕さ
この曲の素晴らしいのは、やはり2番の歌詞でしょう。
夢中で愛し合っていた頃とは違い、主人公の「僕」は愛する彼女を幸福にできるだけの力がないということを、明確に意識し始めています。
「ふっと黙り込む君」や「暗い横顔」が、生活に満足できていない彼女を象徴していますが、それを覆すだけの自信が僕にはなく、結局「しばらく別れて暮らそうか」というセリフが飛び出します。
もっとも、すぐ後に「それとも…」という言葉が続いていることから、二人の関係を自分で結論つけかねていることが推測されます。
自信のなさが結論を導くことができない男を作りだしているわけですが、当時の浜省作品に顕著なこうした男性像に、僕はずいぶんと胸を打たれたものです(笑)
もっとも、当時はまだ愛のなんたるかもわからない子供だったわけですが。
この曲の美しいところは、男性が自信を失っていて、なお彼女を愛し続けているという部分ではないでしょうか。
繰り返される「お願い 今は 何も言わずに信じて」という言葉が、彼女への深い愛情を感じさせます。
サウンド的には、アコースティックギター1本で演奏できるフォークソング・スタイルで、アレンジによって壮大なバラード感を演出しています。
こういう曲は、ギター1本で弾き語りして楽しい曲ですね。
かなり個人的な話ですが、中学生くらいの頃、ある小説を読みながら「ラブ・トレイン」を聴いていたら、ちょうど小説のラストシーンで、この「君の微笑」がかかっていました。
もともと泣かせるような悲しいラストシーンに、この曲がぴったりはまっちゃって、涙が止まらなかったことがあります(笑)
僕もまだ純粋な少年だったんですね〜。
浜田省吾先生も「今では書けない詞」と言うかもしれませんが、僕にとっても、今では取り戻すことのできない感受性だったなあと思います。