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浜田省吾を聴いてみたい方に
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Thank you
浜田省吾2005年発売のアルバム「光と影の季節」収録曲。
2005年10月にはシングルカットされる予定です。
浜省のセリフ部分が特に人気で「でも そりゃ無理だぜ」「まぁ嬉しかったけどさ」なんていう浜省節がファンに受けているようです。

歌のストーリーは、リストカットした女の子に恋していた男の子が、君がこの世界に生きていることにThank youと歌うというもの。
めちゃくちゃヘヴィな状況設定なのに、重たさが全く伝わってこない作品です。

スノッブな君が まさかあんな安モーテルで手首切って
真夜中に救急病棟 運び込まれるなんて
悪い冗談 聞かされてるみたいだった
でもとにかく…
今も君がこの世界に生きていることにThank you
彼女が自殺(未遂)したという事実よりも、未遂に終わったということに主眼を置いて歌われているところがこの歌の特徴です。
「死」への思いが稀薄すぎて、人が一人死にそうになったというリアリティが全然伝わってこないわけです。

リストカットといえば、僕らの世代だと、甲斐バンドの「冷血(コールド・ブラッド)」を思い出します。

奴のガールフレンドが狂言自殺図った晩
外はスコールのように激しい雨
ポリス呼び出し事件を告げて車に飛び乗る
鼓動は早鐘のよう 悪い予感振り払い
ドアを蹴破って部屋に入ると
フロアーは血の海 彼女が横たわる
甲斐は、この曲で彼女の体から流れ出る赤い血に人間の本質を見出そうとしています。
そこでは、一人の人間が今まさに死んでいくというリアリティがこれ以上ないくらいに溢れていました。

浜田省吾は、自殺という極めてヘヴィなテーマを選択しながら、その本質的な問題を追求するのではなく、一人の女性のことを考える男の子の気持ちだけを浮き彫りにしようとしています。
そして、その男の子は、彼女が自殺しようとした背景や、彼女を自殺へと追い込んだ社会的な歪みや人間関係を分析することなく、ただ彼女が「死ななかったこと」に対して「Thank you」と叫んでいるわけです。

たとえば、「I am a father」の主人公の父親が、自分の子供が突然学校を襲った暴漢に襲われて殺されかけた時に、「子供が今も生きていることにThank you」と歌うのかというと、それはかなり疑問です。
たとえば、いじめで追い込まれた子供が自殺未遂したとしたなら、暴漢に集団レイプされた女の子が自殺しようとしたなら。
当たり前に考えると、誰かが自殺しようとした時に「Thank you」などと叫んでいる精神的な余裕はないように思えます。

それでは、なぜこの歌の主人公の男の子は「Thank you」と叫んでいるのか。
いくつかの仮説を考えることができます。

1 彼女が自殺することをあらかじめ知っていた
2 そもそも死への観念が気迫である
3 彼女の生死よりも自分の立場の方が重要である

「スノッブな彼女」が派手な生活を続けていることに対して、なにがしかの危機感を彼が感じていたとしたなら、あるいは彼は彼女の死を予感していたのかもしれません。
とすると、仮説1のようにある程度の心の準備ができていたと考えることもできます。
ただし、歌詞の中だけでは「悪い冗談聞かされてるみたい」とあるだけなので、その予感を裏付けることは難しいように思われます。

次に、浜田省吾はあえて「死」という観念に稀薄な現代の若者の姿を逆説的に描いたとしたなら、どうでしょう。
「I am a father」の中で、子供が父親に「どうして人は殺し合うの?」と問いかける場面があります。
「死」に対する現実感が日常生活から消えていく時代の中で、主人公の若者は彼女の「死」に対する現実感を持ち得なかったのではないか、というのが仮説2です。

さらに、仮説3ですが、この歌の主人公は彼女が自殺したという事実よりも、「彼女が自分を病院に呼んでくれた」「二人だけの時には自分に対して特別な態度を見せる」というあくまで、自分の立場を重視したストーリー展開を見せています。
どこまでも自己中心的な主人公の姿を、浜田省吾は現代の若者の象徴として描いたのかもしれません。

そのように考えると、軽快なメジャーコードのリズム&ブルースのメロディ、いくつかのセリフ、「Thank you」というタイトルの持つ意味などが理解できるような気もします。

最後にもうひとつ。

主人公が特別な宗教観をもって、彼女が「死ななかった」ことを「神様」に対して「Thank you」と言っているとしたなら、これまでの仮説は無用です。
というよりも、そのように解釈する方がこの歌のとらえ方としてはスマートなのかもしれません。

誰かが死にかけた時に、心の中で「Thank you」と叫べるかどうか。
僕にはちょっと疑問です。

「死ななかった」→「とりあえずほっとした」→「Thank you」

最後の「Thank you」がやっぱりこの歌のすべてなんでしょうね。


| 全曲レビュー(26-My First Love) | 20:57 | - | trackbacks(0) |
I am a father
浜田省吾「My First Love」からの先行シングルとなった「I am a father」です。
6月の「父の日」のタイミングで発売、話題性を狙いました。
PVは時任三郎が主演するなど、かなりの凝りよう。
このPVのショートムービー「キャッチボール」は、今後に上映されるそうで、そちらも楽しみですね。

さて、久しぶりに浜省らしいメジャーコード&アップテンポのロックンロール、最高にお気に入りです。
テーマは「スーパーマンでもヒーローでもない、普通のお父さんに向けた応援歌」。
テーマがテーマであるだけにファンの反応は賛否両論。
そりゃあファンにだって好き嫌いはありますから、全部の曲を「良かったよ♪」って言ってもらうのは無理な話です。
まあ、僕的には「浜省、ありがとう!」って感じだったんですけど。

サウンド的には「パーキングメーターに気をつけろ!」のサビのフレーズを引用して、実に浜省らしいサウンドになってます。
疾走感溢れるギターとドラムも良いです。
フェードアウトしないで叩きつけるように終わるエンディングも爽やか。
あー、これって浜省だよね〜と納得できるメロディというんでしょうか。

問題はテーマ。
社会的なメッセージや哲学的な歌詞を期待するファンには痛いかもしれない「お父さん」ネタ。
でも、実際の「お父さん」には、この歌応えますよ。
僕はその時期ちょうど、人生のどん底とでも呼ぶべき境遇にあったので、この曲がラジオから流れてきた時には、本当に救われるような思いがしました。

迷ってる暇なんかない 選んだ道進む
自分が選んだ道がベストの道だったかどうか分からないけれど、とにかく進むしかないんたぜ、という浜省のメッセージは、ネガティヴだった僕の気持ちをめちゃくちゃポジティヴにしてくれました。
こんなに前向きな浜省って珍しい!とか思いましたよ(笑)
僕がこの曲を素晴らしいって思うのは、その前向きな姿勢なんです。
もちろん、不安や悩みや迷いは付きまとっているはずなんだけど、それら全部を吹き飛ばすようにこの歌は疾走している、走っているんです。

ということで、この曲は僕の中で浜省のベストソングになるような曲だと思っています。
でも、今の若い人たちがこの歌を聴いて、「なんじゃ、こりゃ」って思う気持ちはとても大切なものです。
若い時には理解できないものがあるし、年を取ったら理解できなくなってしまうものもあるんですね。
僕らは、こういう歌でもないと突っ走れない年齢になってしまったんですね(笑)

| 全曲レビュー(26-My First Love) | 22:42 | - | trackbacks(0) |
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